
「緑の木々の豊かさに、ムハンマドの教えを思いました」
── ギュレチ・セリム・ユジェル氏
セリム先生 アッサラームアライクム(アラビア語で、あなたの上に平安がありますように、の意)。
── ワアライクムッサラーム(あなたの上にも、の意)。セリム先生は、イスラーム文化講演会でも、出張講義でも、必ずこの「アッサラームアライクム」の唱和から、お話を始めていらっしゃいますね。
セリム先生 それと笑顔です(笑)。前にもお話しましたように、この挨拶は、国境に関係なく、世界中のイスラーム教徒に通じる便利な言葉であり、万国共通の人の心をひらく鍵であります。と同時に、「サラーム」という言葉には、「平和、平安、道」といった意味があり、「イスラーム」の語源でもあるんです。
── イスラームはまさに、平和の宗教なんですね!
セリム先生 イスラーム諸国は、中東や北アフリカを中心に、中央アジアから東南アジアまで広がっていますが、ヨーロッパ、アメリカやカナダでも、イスラームの人気はますます高まっています。また、日本国内にも10万人ほどのイスラーム教徒がいます。その8割は外来者ですが、日本人の入信者も1980年ごろから増えて、現在、推定で2万人前後がイスラームの信者であるとされています。このように広い地域で、たくさんの人たちが使っている平和の挨拶が、日本の街角でも、自然に飛び交うようになるといいな、と期待しています(笑)。
── 日本におけるイスラームの広まりを、リアルタイムでご覧になってきたわけですね。
セリム先生 来日したのが、1990年の4月4日でしたから、まもなく18回目の春を迎えます。そのときの光景は、昨日のことのように目に浮かびます。大阪空港に着いた次の日、広島大学に向かうため新幹線に乗りました。まず、新幹線を見て感激したんですね。私はトルコの内陸部出身で、電車を見たのも、海を見たのも、イスタンブルの大学に入学したときが初めてだったんです(笑)。ですから、高速の新幹線には感銘を受けました。でも、もっと驚いたのが、車窓を流れていく風景でした。右を見ても左を見ても、きれいに木が植えてあって、一戸建てが多い。それから花。4月だったので、あちらこちらに、いろんな花がきれいに咲いていまして、広島市内に入りますと、もうツツジが咲いていました。心が震えたことを今でも・・・。
── それは、うれしい驚きでした(笑)。
セリム先生 イスラームでは、緑の木をとても大切にするんですね。木の苗を手元に持っていて、明日この世が終わると知っていてもその苗を植えなさいと言う、預言者ムハンマドの言葉があります。また、イスラーム圏で広く行われていることですが、子どもが生まれたら、木を植えます。そうして、その木が子どもと共に成長して、木陰で多くの人が休めば休むほど、つまり木陰が活用されればされるほど、その木を植えた人と子どもには、アッラー(神)からの報奨をもらえる、とされています。緑の木々の豊かさにも、日本とイスラームの共通項を見出せて、とってものどかな気分になりました。(つづく)
3月12日(月)掲載